2019/10/04

ピルについて

ピル、経口避妊薬、低用量ピル、OC…呼び方は沢山ありますが、ピルを服用している方って意外と多いのではないのでしょうか。
薬や避妊の話は日本でもスウェーデンでも誰これ構わず話すような話題という扱いではありませんが、今回はピル、特に低用量ピルの話です。

私は10代からのピルユーザーです。
きっかけはPMSの治療のためでしたが、今はピルの便利さ(避妊、生理が来る週が分かる等)の為に服用しています。

ピルには人によって向き不向きがあります。
ピルを服用する全員の人に同じ副作用があるわけでもありません。
私は好んで、特に不快な副作用もなくピルを服用していますが、ピルを服用しなければなならない、服用しているけれど身体・精神的にひどい副作用に悩んでいる方もいます。
ピルと血栓症のリスクの関係はよく語られることで、そのほかのリスク・副作用もピルを服用するにあたってよく認識、理解、意識していることが大切です。

ですが、特に避妊方法としてのピルは大変便利なものです。
今回はそういう視点から書きます。
服用している人主体(月経がある人主体)で避妊ができること。これは大きなエンパワメントだと思います。
セックスを(できるだけ少ない心配で)楽しむ権利。これはセックスを任意的に、倫理的にするすべての人があるべき権利です。
男性用コンドームを着用したセックスの後、生理がちゃんと来てくれるのか、妊娠していないのか、そういう不安も軽減されます。
ピルだけではSTIの予防はできませんが、コンドームとピルの組み合わせは信頼できる避妊・STI予防方法です。

日本では引越しをする度に違う産婦人科やレディースクリニックで処方箋を出してもらっていました。
ですが、どこでも1シート(28錠)2500円~3000円。
私が処方されていたピルは保険適用外でした。10年前は、PMSの治療のためであっても保険適用ではありませんでした。(現在はどうでしょう?)
初診だと病院の初診代もかかります。
欲しいピルの銘柄もしくは種類を取り扱っていない病院も多く、個人輸入代行サービスでタイからピルを買おうかと考えたこともあります。
また、処方箋も最高二か月分しか出してもらえず、病院によっては一か月分しか出してもらえないこともありました。地元に住んでいた時には産婦人科が家から数十キロのところにしかなく、そこまでほぼ毎月車を出すのは大変不便でした。
費用の高さ、保険がきかない、頻繁に病院に通わなくてはいけない。こんな要因がピルの普及を妨げているのではないでしょうか。

スウェーデンでも、ピルは処方薬です。処方箋(recept)を出してもらえないと買えません。
住んでいる地域によって方法は少し異なるようですが、少なくともVästerbotten県ではこんな感じで処方されます。

1. 地域の診療所/VårdcentralenにいるBarnmorskaに連絡をして、アポイントメントの時間を予約する。連絡先はVårdcentralenのウェブサイトに書いてあります。
2. Barnmorskaとピルの相談。病歴・薬歴チェック、血圧測定など。無料です(診療所で通常取られる"手数料"、patientavgiftもかかりません)。
3. Barnmorskaがピルを処方してくれます。処方箋はデジタルで自分の個人番号/personnummerと繋がっているので、後ほど薬局に処方箋を取りに行きます。

妊娠、避妊、STIなどに関わることは地域のBarnmorskaが担っています。日本語でいうと助産師でしょうか。ですが、担う仕事は日本の助産師さんよりも幅広いそうです。
スウェーデン語でピルは一般的にp-piller、ピルも含めた他の避妊方法はpreventivmedelといいます。

私が住んでいるVästerbottenでは、今の時点で26歳以上は13シートは299krで処方されます。
記憶が曖昧なのではっきりとは言えませんが、私が25歳だったときは若者区分だったのでもっと安かったです。6シートで100kr位だったような…
日本と比べると恐ろしいほどの値段の違いに驚いたので、初めてスウェーデンでピルを処方されたときにBarnmorskaになぜこんなに安いのか、と聞いたら「国も(ピルも含めた処方される避妊方法に)負担をしているからだ」と言っていました。

混合型の21錠×13シートパッケージ

日本とスウェーデンのピル事情の違いといえば、値段の違い、国の経口避妊薬や避妊方法への考え方の違い、診察の頻度の違いでしょうか。
日本では病院に行く度に(つまりほぼ毎月)血圧測定と問診がありました。今、こちらでは一年に一回だけ血圧を測ります。私はネットで処方箋を新しくしているのですが、問診の代わりに特に血栓症予防・早期発見に向けた質問項目(突然頭が痛くなることがあるか、等)を答える欄があります。

私自身10年もピルを服用しているので、血栓症やピル服用者ならではの高い他の病気のリスク、たばこ類や西洋オトギリソウとの組み合わせのリスクも自分なりに理解はしているつもりですが、注意するに越したことはないです。
ちなみに、西洋オトギリソウはスウェーデン語でJohannesört。日本語ではセントジョーンズワートとも言うそうです。よくロシア産のミードやうつ病にいいと言われるハーブ系のサプリメント、お茶に入っています。個人的な体験ですが、スウェーデンでは日本より西洋オトギリソウが含まれるものに遭遇する頻度が高いです。

言うまでもありませんが、上記はあくまでも個人の意見、体験です。
頭痛薬でもお酒でも何でもそうですが、ピルの服用には利益もリスクもどちらも伴います。
スウェーデンでも日本においてもピルを服用するにあたっては必要な診察を受けたり、下調べをしたり、何よりも(特に避妊目的ならば)自分の意志でピルを服用することを決めてください。

※スウェーデンでピル処方を考えてる方に役立ちそうなリンク
https://www.rfsu.se/sex-och-relationer/for-dig-som-undrar/frageladan/preventivmedel/(RFSUというジェンダーと性の啓蒙活動団体。リンク先はピルの他、コンドームやアフターピルなどの避妊方法へのページ)
https://www.1177.se/Vasterbotten/liv--halsa/sexuell-halsa/skydd-mot-graviditet/p-piller/

2019/08/12

SAS修了、うつ治療、大学開始

とても久しぶりの投稿です。
あまりにも久しぶりすぎるので、時系列で何をしていたかを書き綴ります。

昨年、2018年の3月末をもって、やっとSASコースを修了しました。
これでスウェーデンの高校のスウェーデン語(=国語)はちゃんと履修したということになります。

振り返ってみれば、スウェーデンに引っ越してから2週間ほどでSFIに通い始め…
2016年9月~2017年3月はSFI(6ヶ月)。イントロダクションコースを5週間、次にCコースとDコースを各10週間ずつ通学にて勉強しました。計25週間。
そして、2017年3月~2018年3月はKomvuxのSASコース(12ヶ月)。通学でSASイントロダクションDコース(SAS grund D)を10週間、そしてSAS1を10週間。SAS2からは通信コースに切り替え、SAS3と10週間ずつ履修。計40週間。
第二言語としてのスウェーデン語学習期間はSFI、Komvuxの合計65週間ですが、年数で数えると「スウェーデン語を勉強している日常」は1年6ヶ月でした。

そして3月末から約5ヶ月間、アルバイトだけの生活になります。
この時には二つの仕事を掛け持ちしていました。毎早朝のジムの掃除の仕事と、レストランの仕事です。
レストランの仕事はこの時点で一年以上続けていた仕事でしたが、徐々にシフトが入らなくなり、最後の2か月間は実質クビ状態になっていました(そして、案の定、ある日突然シフト希望システムにログインできなくなり、とうとう「通知なしでのクビ」になったのです)。
毎早朝の掃除のバイトは計週10時間のとても"軽い"仕事。とても楽な仕事でもありましたが、自分が人の見えないところで仕事している、誰にも認識されていない仕事という感覚があり、レストランのシフトが入らなくなってきたこともあり、経済的にも少しずつ辛くなっていたところでした。
また勉強が終わってしまい、この先は永住許可が無事に下りて国からの勉強補助金であるCSNをもらいながら大学に行けるのか?という先の見えない大きな不安が常に頭の中にありました。
※現在の法律では、CSNは基本的に期間限定の居住許可/tidsbegränsad uppehållstillstånd保持者には支給されません。私の場合ならば、CSNを支給されるのにビザ延長申請において永住許可/permanent uppehållstillståndが下りることが必要でした。ですが、ビザを担当する移民庁のワークロードは二年前とさほど変わりがないようだったので、ビザ延長申請の結果が下りるのに数か月、または一年もかかるという噂を聞いていました。

何時からか鬱々しはじめたかは、はっきりしていません。また、昔から鬱の傾向(鬱に陥りやすそうなマインドセット)があったと思います。
兎にも角にも、その時の自分の状態にどうしても耐えられなくなり、日本の家族の勧めで4月末位に初めて心療内科(正式に言うと、住んでる地域の医療センター/vårdcentralenの心療内科/psykolog)に電話を掛け、時間を予約しました。まあ、予約するまでにいろいろとトラブルはあったのですが。
予約が取れたのは、一か月先の日付。予約電話にて自殺の傾向がないからと判断されたのでしょう。

最初の診療ではいくつかのテスト(仮に人生の辛さをはかるテスト、と呼びましょう)をし、中~重程度のうつ病診断を受けました。
心理士と話しをした結果、心療内科ではKBT / Kognitiv beteende terapi、日本語でいうと認知行動療法を受けることにしました。
さて、KBTですが、食べる・寝る・動くのバランスの大切さ、運動をするときに脳から発せられる"幸せ物質"は抗うつ剤と同じくらい効果があるらしいというはなしや、「これが起こったら一番最悪なシナリオは何?なぜそれが最悪なの?その最悪なシナリオで死んでしまうか?」などを心理士と一緒に考えたりと、これがまるでレクチャーを受けているみたいで楽しかったです。
結果、投薬はせず、認知行動療法とジムに行く、嫌でもちょっと人と会ってみる、ご飯をちゃんと食べる等の"宿題"をすることでうつと向き合う、という風になりました。

KBTは大体5月末から9月末まで、3週間か4週間に1回ほどのペースでした。

その間に、文字通り病気になるほど心配の種の一つだった永住許可も数週間で通り、それと同時に大学に通うためにCSNの申請をしました。
旅行で不在だった友達の猫二匹の面倒を見ながら(実際猫と昼寝ばかりしていましたが、これがかなり鬱に効いたと思います。猫に必要とされている、猫が私に打ち解けてくれているという実感にとても救われました。誰か…というか猫に認識してもらっている、そんな感覚です)毎早朝のバイトをし、友達と会ったり、湖まで自転車で本を読みに行ったりと。
昨年夏のウメオは猛暑でしたが、と言っても最高35度程だったでしょうか。カラっとしたいい天気で、天候にかなり恵まれた夏でした。まあ、この天候が森林火災を広がらせた原因にもなっていたのですが……

KBT最後のセッションの数週間前、つまり9月第一週目からは、大学が始まりました。
8月にはCSNの申請も許可され経済的な不安もなくなり、8月下旬にはあまり予想していなかった身辺の変化はありましたが、26歳にしてまた学部生生活をスタートしました。

大学はウメオ大学、専攻は博物館学&民俗学。ウメオ大では新しいBranschutbildningen för museer och kulturarv(無理やり日本語にすると、博物館・文化遺産分野教育プログラム)の第一期生です。
スウェーデン国内ではウメオ大が現代における博物館学のパイオニアのような存在だそうです。昨年末をもって退職してしまいましたが、スウェーデンで唯一の博物館学教授もいたほどです。他の北欧諸国にある博物館学の研究機関と並んで、Nordisk Museologi/The Journal Nordic Museologyという博物館学・文化遺産ジャーナルのパブリッシャーの一つでもあります。
私は日本の大学では文化遺産学を勉強し、博物館学もすこしかじりました(博物館資格課程を履修したので)。卒業後も文化遺産や博物館学のフィールドにしがみつき、地元のまちあるきプロジェクトに運営側として参加させてもらったり、職探しも文化財・博物館系にフォーカスしながら、いくつかの仕事を掛け持ちしたり、国際交流団体の嘱託員をしたり。
スウェーデンの博物館での仕事のチャンスはまだ掴めていませんが、この大学プログラムで業界内でのネットワーキングができたらいいなと思っています。
今年6月には博物館学のB-uppsats(進級論文)を書き上げ、なんとか一年目が修了し、今に至ります。新しい学年は9月から、民俗学のコースから始まります。
ウメオの夏はもう過ぎてしまいましたが、これからどうしようかな、どんな風に自分のキャリアを作っていこうかなと日々考えている夏休みです。

今月末になれば在住3年目を迎えます。なので(?)、ブログもそろそろ、ゆるく再開しようかなと思います。笑

きのこ狩りの話や、定期的な餃子・キムチ大量生産の話、趣味になりつつある発酵(食べ物の)の話など。博物館学を学ぶ立場から考えた文化・政治・博物館のあり方など、ちょっとニッチなところにも触れられたらいいなと考えています。

どんな方が読んでいらっしゃるかわからないブログですが。笑
これからもよろしくお願いします ._.